Interview — No.004

「能面師はふらりと東京から京都へ、時に世界に飛び出す」
日本の伝統と新しいカタチ

能面師 / 路上パフォーマー 2026.01

静寂の中に宿る力強い美しさを持つ能面と、街行く人々の心を掴む予測不能なパフォーマンス。一見対照的な二つの活動を両立させる鵺(ぬえ)さん。古来からの伝統を守りながらも、常に新しい表現を追い求めるその姿勢と、活動への情熱について深く伺いました。

“惹かれるのは、人の心を動かす表現。
形は違えど、その本質は同じなんです”

— 鵺

Profile

能面師

路上パフォーマー

5年前に地元青森で能面師に弟子入りし、能面の技術を習得。伝統的な能面の制作を行う傍ら、自身の内なる衝動を表現する場として、都内を中心に路上パフォーマンスを展開。静と動、伝統と革新、二つの表現を通じて人々の心に深く語りかける。

とある日のスケジュール
08:00
起床〜身支度
09:00
能面の制作作業(木彫、彩色)
14:00
昼食
15:00
パフォーマンスの準備(日によって能面の制作作業)
19:00
路上パフォーマンス(場所は日によって異なる)
23:00
帰宅、翌日の準備
「集中して面と向き合う時間と、街のエネルギーを感じながら表現する時間、どちらも僕にとってなくてはならないものです」
この仕事を始められたきっかけは何ですか?

まず、20歳からバンドでライブを始めて、当時のサイファーブームの時からラップを始めました。
高円寺の高架下から始まって、それからはNovel Coreなどと夜の街でライブをしていました。

それから色々あってメルボルンで1年過ごし、地元の青森に帰って来ました。
その時丁度コロナ禍ということもあり、新しくやることを探していたんですが、行きつけのバーで近くに能面師の先生がいると聞いて、弟子入りして1年間能面について学びました。

東京に戻ってからは、新しい師匠に再度能面について学びながら、自分の能面教室や単発のワークショップを主宰していました。

今は京都を拠点にして能面を作っています。

夜の渋谷での路上ライブでは多くの注目を集めていた
原動力や最初のステップについて

原動力はやはり、「人の心を動かしたい」という強い思いです。能面を通して、あるいは路上でのパフォーマンスを通して、見た人の心に何か一つでも引っかかるものを残せたら、と思っています。
最初のステップとしては、能面制作に関してはひたすら技術を磨くこと、路上パフォーマンスに関しては、日々ライブを続けることでした。

これまでの道のりで一番大変だったこと

能面の世界は非常に奥深く、伝統を重んじるが故の難しさも感じることがあります。一つ一つの面の意味や歴史を理解し、先人たちの技術を受け継ぎながら、そこに自分の個性をどう表現していくか、常に試行錯誤の連続です。
路上パフォーマンスでは、天候に左右されたり、思うように人が集まらなかったり、時には厳しい言葉をいただくこともあります。それでも、足を止めて見入ってくれる人が一人でもいる限り、私は表現し続けたいと思っています。

これからの夢や展望について

将来的には、自身の能面作品展を開催したり、能面を使った新しい形のパフォーマンスにも挑戦していきたいと考えています。また、能面の魅力を若い世代にも伝えていくための活動にも力を入れていきたいです。路上パフォーマンスを通して、もっと多くの人と出会い、様々な形で表現の可能性を追求していきたいです。

鵺さんの History
20 2015
初めて路上でパフォーマンスを行う
21 2016
夜の渋谷で日々路上ライブに明け暮れる
24 2019
武者修行として1年間メルボルンに滞在し、日夜路上ライブを行う
25 2020
コロナ禍を契機に、地元青森で能面師に師事して能面を学ぶ
26 2021
東京に戻り能面師として活動、路上ライブも継続
30 2025
京都を拠点として、能面の海外出展など国を跨いで精力的に活動中
鵺さんが作り上げた能面たち

鵺さんにとって
能面と路上パフォーマンスとは

“静と動、内と外、
二つの異なる表現で世界と繋がるための架け橋”

メッセージを込めた能面を手に持つ鵺さん
Interviewer's Note 権上 裕介(TOKYO LICKS 主宰)

静かに、しかし熱い情熱を秘めた鵺(ぬえ)さんの語り口が印象的でした。

インタビューを通して、表現の形は違えど、根底にある「伝えたい」という気持ちの大切さを改めて教えられた気がします。今後の活動も陰ながら応援しています。

伝統的な能面の世界と、自由な路上パフォーマンスという、一見相反する二つの活動に共通する「人の心を動かしたい」という強い思いに感銘を受けました。

能面に対する深い知識と愛情、そして路上でのパフォーマンスに対する探究心。どちらの活動にも真摯に向き合う姿勢は、多くの人に勇気を与えるのではないでしょうか。伝統を守りながらも新しい表現に挑戦するその姿は、まさに現代のアルチザンだと感じました。

インタビューを通して、表現の形は違えど、根底にある「伝えたい」という気持ちの大切さを改めて教えられた気がします。今後の活動も陰ながら応援しています。

取材・原文 / 権上 裕介(TOKYO LICKS 主宰)