Interview — No.004

表舞台の「ウラオモテ」、
そして穏やかな日々。

和田 みなみ D2C企業の正社員 / 元声優・ライブアイドル 2026.01

声優・ライブアイドルとして活動してきた和田 みなみさん。当事者として相対した現実で見たもの、そして現在。そんな彼女が「NGなし」ということでこれまでのことについて赤裸々に語ってくれました。

"アイドルとしてファンの方に喜んでもらいたいという思いが強かったです"

— 和田 みなみ

Profile

D2C企業の正社員

元声優・ライブアイドル

声優として事務所にも所属し、アイドルユニットとしても活動。事務所退所後はソロアイドルとして活動する傍ら、今の会社にアルバイトとして入社。後に正社員として登用され、コロナ禍・結婚・出産を経験した現在は社業に専念している。

とある日のスケジュール
08:30
起床
09:00
保育園へ送り〜夕飯の買い物
09:30
帰宅〜洗濯物等の家事をしつつ、仕事開始
12:30
1時間ほどランチ休憩
13:00
午後の業務
16:00
保育園おむかえ
16:30
お風呂
17:00
夕食作り、作業残りをやったり、娘を遊ぶ
19:00
夫帰宅〜夕飯
21:30
寝かしつけながら就寝(起きて作業したりする日も)
「在宅が出来るのでとてもありがたいですね」
声優とアイドル活動、それぞれ始められたきっかけは何ですか?

声優ですが、好きな声優さんがいて。「その人に会いたいな」っていう不純な動機です((笑))
アイドル活動については、声優のしばらく仕事がないので、同期の子何人かと一緒にユニットを結成してほしい、ということで始めました。

なみにその会いたい声優さんには……?

会えたんです!会えたことがきっかけで「もういいや……」と思い、声優は辞めました。本望でしたね(笑)

燃え尽き症候群というところでしょうか、ありがとうございます。
では、少し切り込んで伺います。
声優やアイドル活動は楽しいという思いがあったと思いますが、一方でこの先の自分はどうなるだろうといった不安などに直面する場面はありましたか。

不安は漠然とあったというか……不安ありきの活動だったと思います。
仕事柄、活動すればするほど稼げるという仕事でもなかったので。しがみつく、というのが適切でした。
私自身、始めた時も5年くらいで売れっ子!ってことがなければ声優は辞めよう、という思いがあって、5年経ったので辞めた!という感じでした。
当時私が思ったのは、言葉を選ばないなら「使い捨て」ですね。若手なんて特にそうでした。
業界的に若くてフレッシュな人はたくさん入ってきます。それに若手は安く使うことができます。
今は変わっているかもしれませんが、私が仕事をしていた当時は声優にはランクがあって、何年でこのランクに上がるってルールのようなものがありました。
実態として確か5年目ぐらいまでは安く使うことができるんです。
その間で結果を残せば、上のランクになる=ギャラが上がっても、引き続き使ってもらえる、という仕組みでした。
ランクが上の人は指名でこのキャラをやってほしいという一方で、下の人はいろんな仕事をしていました。

声優は5年くらいで見切る、という考えがあったんですね。アイドルの方はいかがですか?

声優事務所を退所してアイドルユニットも辞めてからは、当時のファンからも続けてほしいという声もあり、趣味としてアイドルを続けていました。
基本的には仕事終わりや土日に活動をしていました。
純粋に楽しめたか?と言うとどうでしょうか。
私の周りにはいろんな子がいました。
私のように趣味として楽しむ子がいた一方で本気で向き合う子ももちろんいました。
私はアイドルが好きと言う思いがもちろんありましたが、本気で活動している子に対して失礼かな?という思いがありました。
色んな子を見ていたからこそ、楽しむという思いに自然と線引きをしていたのかもしれません。

例えばこういうファン、ちょっと無理かも…と引いたことはありませんでしたか?

なるほど……(笑)
すいません、ちょっと長くなります(笑)

私は元々懐メロのカバーをやっていまして、それもあってお父さん世代のファンの方が多かったです。
それもあって、所謂「ガチ恋」勢はいなかったですね。
ですけど、「デートしよう」とか特典とかチェキ渡すときに取るふりをして手を触ってきたり……みたいのはありましたね(笑)
それはちょっと、やだなあ……と思っていました。
かく言う私もオタクではありまして、一人称が俺になっちゃうので気持ちはわかるんですけど……(笑)
基本は皆さんいい人なんですけど、「話長いなあ」とか「DMまた送ってきてるなあ」とか

あと、そういえば1回騙されてファンの人と野球見に行っちゃったんですよ!
ファンの方に野球のチケットをもらっていざ行くと、隣にその人がいたんですよ!
私自身が純粋すぎて「え?野球のいい席だ、やった!」って気持ちで行ってしまって
帰るわけにも行かず……
これはちょっと嫌でしたね(笑)
しかもコンビニで買ったおにぎりをもらって……嫌でしたけど失礼かなと思ってしまってちゃんと食べました。

当時を思えば無視したりそのまま帰ればよかったですね……

想像をはるかに超えるご回答ありがとうございます。
これ、オフレコにしましょうか?

いえいえ、何でも話しちゃいます、オブラート包まなくていいですよ(笑)

大変助かります(笑)
では、ここで時系列を変えようと思います。
アイドル活動は実質引退状態とのことですが、その契機がご結婚とご出産であると伺いました。
母親になることで、過去の経験が役に立った、または苦労した、といったエピソードがあればお願いします。

自分で言うのもアレなんですが、スキルで言うとコミュ力ですかね。
いい意味で誰とでも馴れ馴れしく話せてしまいますね。
愛想がいい、と言うより異常にニコニコしてしまう、と言うのがあります。
具体的には病院とか子供の保育園とかで、よくありますね。

ライブや物販をやってたときの話し方が体に染み付いているんだと思います。
「ええ〜?」「すご〜い!」とか(笑)
年に一度保育園で保護者が集まる機会があるんですが、
他の保護者さんの挨拶でも「え?そうなんですか!?」みたいなリアクションで(笑)
その一方で「この人初対面なのに馴れ馴れしい!?」みたいな(笑)
でも、それで仲良くなれると言う面もあるので、メリットでありデメリットでもある、と言う感じです。
はい(笑)

あとは子守唄は歌いやすいです!(笑)
オルゴール流れてきても一緒に歌っちゃう(笑)

素敵な回答ありがとうございます!では、時系列を今に近づけていこうと思います。
今のお仕事についてですが、どんな立場でどんな仕事をされているか教えてください。

はい、現在は男性向けのヘアケア事業のECサイトを運営する会社にて正社員として勤めています。
10年ほど勤めていて、歴としては長いんですが、5年くらいはアルバイトで働いていました。
おそらく、責任あるポジションに就いてないと行けない年齢なんですが、
正直なところ、責任感ある仕事が苦手なんです。

声優時代とも重なるところがあるんですが、売れなきゃっていうプレッシャーが重くのしかかった結果辞めたと言う経緯もありまして。
私自身いないと回らない場面もあるだろうな、というものもあるとは思っているんですが……
実際に、育休を取得していた頃は序盤は毎日会社から連絡をもらっていましたね(笑)
私自身はリーダーではない、というところです。

なるほど。現場を知る人が支えている構造は、どの業界でも似ていますね。
それ故にみなみさんがいないと回らないことも多々ある、ということはそれだけ会社に必要とされているということですね。
ちなみにもう少し、育休時代のことについて掘り下げてもらってもいいでしょうか?

そうですね。先ほど育休の際に連絡を受けていたと話ましたが、
その時は、コールセンターでは対応しきれない問い合わせは、過去にどう対応していたか、という連絡は受けていました。
育休当初はほぼ毎日きていましたが、後半はたまに来るというような頻度でしたね。

ありがとうございます。
実際、アルバイトから正社員になったということで、それだけみなみさんの経験が会社で大切にされてきたということですね。

ありがとうございます。

私も最初はアルバイトで働いていましたが、元々試用期間といいますか。
半年で社員登用、ということもあったんですが、
そのころの私は、「まだ遊びたいな!」という思いがあって(笑)
そのころはライブアイドルを平日2、3回やっていました。
それもあって社員の話は断っていました。

そんなこともあったんですが、5年前にコロナ禍があって会社も完全に在宅になってしまいました。
私としてもライブも出来ないし、年齢もあるし、「そろそろ……身を固めるか!」という思いもあり、
社員にしてもらいました(笑)

そんなことがあったんですね(笑)
10年のうち5年アルバイトということはちょうどコロナ禍とバッティングしますね。
社員になったのもコロナがきっかけだったということでしたか。

そうだったんです。
コロナ禍の時もアイドル活動を続けるというのもあったと思うんですが、
当時主流だったライブ配信やSNS宣伝が苦手だったというのもあり、
活動から心が離れた、というのがありました。

そのあと、2022年に結婚、翌年に娘を出産しました。

私自身もコロナ禍の経験がトリガーで転職しましたが、コロナの影響って大きかったんですね。

そうですね。
私としては、コロナでライブをやらなくなって
そうしたら「結婚しなくちゃ!」ってなったんです(笑)
そんなタイミングで会社の子が婚活アプリをやってて「一緒にやりましょう!」って誘われて
そのままの流れで(笑)

活動に未練はないということでしょうか?

活動している間は、潔癖というか「特定の方と付き合っては行けない」という思いがあって それがないならもう結婚するかってなりました。

心からアイドルだったということでしょうか。
それだけアイドルに対して誠実に向き合っていたんですね。

そう言っていただけると救われます。 それもやっぱり私自身がオタクだったからだと思います。 「好きなアイドルの子が裏で遊んでいたら嫌だな」って思いは私自身にもありましたね。

ありがとうございます。
最後になりますが、将来のキャリアについてはどうお考えですか?

キャリアですか……正直まだ考えきれてないですね。
今の仕事も育毛剤メインでやってるから面白くはないんですよ。
理不尽なお問い合わせがたくさん来たりすると、
「なんかもう……やだ!」って思うんですけど(笑)

将来、数多くの男がみんな問い合わせる側に立つ可能性がある現実に涙が出そうですが

いやいや(笑)

コールセンターで処理しきれなかった問い合わせが回ってくるので、本当にこちらでも想定外のクレームとかもあって、
嫌だなと思うこともよくあるんですが、一緒に働く方が本当にいい方で。
あと一緒に働く子とランチに行きたいために出社するってくらい働き方が柔軟というのが私にとって大きいですね。
仕事の辛さもありますが、職場環境に恵まれているので、このまま仕事は続けていきたいですね。

長くなってしまいましたが、インタビューは以上となります。 本日は貴重なお話ありがとうございました!

はい、こちらこそありがとうございました!

みなみさんの History
17 2008
声優事務所へ入所〜アイドル活動を始める
20 2011
浅草の飲食店でアルバイトを始める
22 2013
憧れの声優さんと共演できたことで、燃え尽き症候群のようになる
23 2014
声優事務所を退所 浅草のバイトを辞める、職を探す、ソロアイドル活動を始める
25 2016
保育園勤務〜退社
26 2017
今の会社へアルバイトで入社
28 2019
婚活を始める
29 2020
コロナ感染拡大と同時に在宅勤務が始まる、夫と出会う
32 2023
結婚
33 2024
1月娘誕生
34 2025
5月より職場復帰する

今、自分の仕事に迷いのある人に向けて

あなたにとっての「当たり前」は誰かにとっての「特別」
それを忘れずに後悔のない選択をしてください!

「声を仕事にする」ことを、もう一度。

声優・アイドルとして活動していた経験は、 みなみさんの中で「過去の肩書き」になったわけではありません。

イベントやライブ、物販、日々のコミュニケーション。 人に“伝える声”を仕事として使ってきた経験は、 今もなお、彼女の中に確かな技術として残っています。

現在は会社員として、母として生活を大切にしながらも、 ナレーションや音声のお仕事については、内容や条件に応じて 柔軟に対応が可能とのこと。

過度な演出ではなく、
落ち着き・誠実さ・生活感のある声。
サービス紹介、企業VP、Web動画、社内向けコンテンツなど、 「聞き疲れしないナレーション」を求める方に適しています。

「この声なら任せられる」 そう感じた方は、以下よりお問い合わせください。

Interviewer's Note 権上 裕介(TOKYO≠LICKS 主宰)

温厚で誠実。インタビューを終えて、真っ先に浮かんだのがこの言葉でした。
やり取りをさせていただく中で、元声優・元アイドルという肩書きを意識する瞬間はほとんどなく、
ごく一般のビジネスパーソンの方とお話ししているのと変わらないほど、終始スムーズに進めさせていただいたのが印象的です。
(もちろん、現にビジネスパーソンとして活躍されているわけですが)

声優・アイドル時代のエピソードを語るみなみさんの表情からは、当時の仕事に対する純粋な愛情と誇りが強く伝わってきました。
一方で、その世界に“しがみつく”のではなく、将来を見据えたうえで自ら区切りをつけていたという話には、強い現実感があります。
夢や憧れを否定することなく、それでも冷静に現実と向き合い、次の選択肢を探して動いていた。その姿勢はとても印象的でした。

結婚や出産を経て、現在は会社員として、そして一人の母として日常を積み重ねているみなみさん。
過去の経験が「特別な経歴」として語られるのではなく、今の仕事や生活の中に自然と溶け込んでいる点も、このインタビューの大きな魅力だと感じています。

キャリアとは、一直線に積み上げるものだけではありません。
立ち止まり、方向を変え、環境に合わせて形を変えながら続いていくものでもある。
みなみさんの歩んできた道は、そうした現代的なキャリアの一つのリアルな形を示しているように思います。

本インタビューが、今まさに仕事や生き方に迷いを感じている方にとって、
「こういう選択もあっていいんだ」と思えるきっかけになれば幸いです。

改めまして、貴重なお話をありがとうございました。

取材・原文 / 権上 裕介(TOKYO≠LICKS 主宰)